10月23日、24日のプログラムによせて(長木誠司:音楽学)

来週に迫った10月23日、24日のプログラムについて、東京大学大学院・総合文化研究科教授(音楽学)の長木誠司さんに、文章を寄せていただきましたので、是非ご覧ください。(公演チラシの裏面にも掲載されています。)
 
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「核」~日米の2作品を巡って~
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10月定期には、奇しくも2011年の日本が直面する国難と関わりの深い交響曲が並んでしまった。広島(=ヒロシマ、HIROSHIMA)をテーマとする作品は、音楽に限らず映画や演劇、小説、絵画などなど多くの分野に存在するが、一夜にして原爆を落とした側と落とされた側の立場を両面から対照的に体験でき、考えてみるという機会は演奏会でこそ可能だろう。
 
アメリカの人気現代作曲家ジョン・アダムスは、《中国のニクソン》や《クリングホッファーの死》など、これまでにも非常に社会性の強い、その意味で問題提起的なオペラを書き、「美しい声」を聴きに集まる歌劇場の聴衆に、世界や歴史に眼を開くための鮮烈な訴えかけをしてきた。2005年にサンフランシスコ歌劇場で初演された《ドクター・アトミック》は、原爆の開発者ロバート・オッペンハイマー博士が、その関わった「マンハッタン計画」で、開発から広島への実際の投下までの間に一人間として経験した葛藤を描いている。科学者としての名誉と威信、しかし実用には倫理的に大きな呵責が伴った。科学者の論理と軍人の論理の相克。それらを交えながらオペラは最初の核実験の閃光で大きなクライマックスを迎える。ミニマル・ミュージックのスタイルは、執拗なパルスの反復によって、身も凍るような音楽を作り上げている。今回はその抜粋版とも言える《ドクター・アトミック・シンフォニー》の日本初演である。
 
一方、團伊玖磨が作曲した最後の交響曲となった第6番「広島」は、戦後広島の力強い復興を称えたイギリス詩人エドマンド・ブランデンの詩を最終章でソプラノが独唱する、希望の光の輝くような作品である。能管や篠笛の独奏があり、かつての広島、あるいは長い歴史と美しい風土を持つ広島の光景をひとしきり音楽が演じたあと、原爆そのものは描写せずに、自然やひとびとの再生を愛でる詩が歌われるのである。
 
閃光のドラマと希望の曙光の抒情。ともに、核という切り札を手にしたばかりに、欲望と絶望、野心と自省のせめぎあいから逃れることのできなくなった人間の本質的な性の断面図を浮き彫りにする作品だ。今こそ聴かぬ手はなかろう。
長木誠司(音楽学)
[2011年10月19日 20:40]

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