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明後日、3月27日(金)には、欧州の一流歌劇場で活躍する名匠ジェラール・コルステン氏がモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」やR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」などを指揮します。本日、2日目のリハーサルを終えた指揮者のコルステン氏に演奏会についての想いを聞きました。
 
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 ■モーツァルトとR.シュトラウス
 
私にとってこの二人、モーツァルトとR.シュトラウスは、最も好きな作曲家です。二人とも、たくさんのオペラを作曲しているという共通性を持ち、オペラの発想で音楽を生み出しています。違う時代を生きながらも、ユーモアや悲しみなどが音楽から表れており、実に豊かな表情の音楽になっています。二人の作曲家を、前半と後半で演奏できるのを、とても楽しみにしています。
 
korsten2.jpg■モーツァルトの演奏スタイル
 
先週の「モーツァルト・プログラム」では、オーケストラと共にとても楽しく演奏できました。モーツァルト特有の繊細さを表せましたし、ライヴならではの各奏者の間の反応が素晴らしかったです。私のモーツァルトの演奏スタイルは、ザルツブルクでシャンドル・ヴェーグ先生に習ったことが根幹にあります。楽譜から、どのようにフレーズをよりシンプルに読み取れば良いか、音楽の方向性をどのようにすれば良いか、徹底的に教え込まれました。影響を受けたのは、ニコラウス・アーノンクールとクラウディオ・アバドです。二人とは、私がコンサートマスターとして、何度も一緒に演奏しました。アーノンクールのモーツァルトは、学術的な裏付けにより、かなり緻密に読み解いていくもので、何度も一緒に演奏する中で、大きな影響を受けました。そして、アバドから学んだのは、変化していくことの大切さです。アバドも、アーノンクールらに影響を受け、自分のスタイルを時代と共に柔軟に変えていきました。これも、音楽家にとって、非常に重要なことだと感じました。
 
■リヒャルト・シュトラウスの音楽
 
korsten1.jpg私は、ヨーロッパで「バラの騎士」「ナクソス島のアリアドネ」「エジプトのヘレナ」など多くのオペラを指揮しており、交響詩も数多く手掛けておりますが、いつもシュトラウスのオーケストレーションの素晴らしさ、完璧さに感心しております。「英雄の生涯」には、「ドン・キホーテ」や「ドン・ファン」などの音楽が散りばめられ、テキストはないですが、まるでオペラのように物語が描かれています。読響が、R.シュトラウスの演奏に慣れており、その音楽を表現できることは、4年前のリハーサルの時にすぐに分かりました。そのため、今回はより各楽器のバランスに気を配り、スコアに書かれた強弱などの微妙なニュアンスを出せるように、心がけてリハーサルを行っています。コンサートマスターの重要なソロがありますが、長原幸太さんのテクニックや音楽性は本当に素晴らしいです。お客様には、R.シュトラウスの情熱的な音楽を楽しんでいただければ、嬉しく思います。
 
■4年の時を経て
 
4年前、3月14日のコンサート前日、コンサートが開催できないと知った時は、正直、残念に思いました。もちろん、私も3月11日のあの大きな地震を体験し、東京の状況が分かっていたので、中止についてすぐに納得できました。あの時の日本での体験は、私がこれまで生きてきて、最も衝撃的なものでした。いろいろ多くのことを考えさせられました。自然の大きな力を知ると同時に、人間の存在の小ささを感じました。その後は、私たちが生きる自然界への尊敬の念を決して忘れてはならないと、強く思うようになりました。また震災後の大きな不安の中、ホテルなどで日本人のお互いを助け合う姿や、他人を思いやる国民性にとても感銘を受けました。今回、このように再び来日でき、日本の皆様と音楽を通して時間を共有できることを、とても嬉しく思い、心から感謝いたします。
 
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3月27日(金)19時開演、サントリーホールでの《第546回定期演奏会》のチケットは、絶賛発売中です。ご予約は、読響チケットセンター 0570-00-4390まで。なお、当日券は、開演1時間前から販売します。学生券(2,000円)整理券も、開演1時間前から配布します。皆様のご来場、お待ちしております

第546回定期演奏会

2015年3月27日〈金〉 サントリーホール

指揮=ジェラール・コルステン

モーツァルト:歌劇「劇場支配人」序曲
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」作品40