謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
2011年3月11日の東日本大震災。
私たちは8日後の19日、震災後初の公演を東京・池袋の東京芸術劇場で行いました。
冒頭の黙祷。目を閉じると、まるで大ホールに一人取り残されたかのような静寂の海が広がりました。
その張り詰めた心に染み透る「G線上のアリア」・・・。
被災地の避難所での弦楽四重奏。
最後に唱歌「故郷(ふるさと)」を避難住民の方々に歌っていただきました。
涙する女性の姿に、私自身も目頭を熱くしてしまいました。
震災はあらゆるものを奪い去りました。
故郷も、家族も、希望さえも。
しかし、その中で改めて知らされたことがあります。
人間には音楽がある、人間から音楽は奪えない、ということです。
音楽を聴くことの喜びと慰謝の力は、あらゆる困難を乗り越えてゆく、生命の原動力となるはずです。
お陰さまで読響は今年4月に創立50周年を迎えます。
私たちはこの音楽の原点に立ち返り、活動を続けます。
読売日本交響楽団 理事長 横田 弘幸