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ヴァイグレが語るハンス・ロットの交響曲の魅力

常任指揮者セバスティアン・ヴァイグIMG_5510.JPGレが、「この曲を広めるのに使命を感じている」と語るハンス・ロットの交響曲を、いよいよ9月10日に演奏します。プログラム誌『月刊オーケストラ』(7月号)に掲載されたヴァイグレのインタビューを、一部抜粋して転載します(聞き手:事務局)。

__9月10日の《定期演奏会》で、ハンス・ロットの交響曲を取り上げます。この作品との出会いを教えていただけますか?
 今から20年ほど前、バイエルン放送局のマネージャーから、この曲の自筆譜の複写版を見せてもらったのです。当時はこの曲は知られていなくて、そのマネージャーは興味を持ってくれる指揮者を探していました。私はすぐに興味を持ち、楽譜を見ました。ブルックナーのようであり、マーラーのようでもある印象を受けたのです。はっきりとした構成が見える箇所と、そうでない不思議な箇所があり、とても面白いと感じました。この曲を世界的に広めることには意義があると思い、ミュンヘン放送管と演奏会で取り上げるだけでなく、CDも録音したいと申し出て、演奏会と録音、さらに楽譜を出版するプロジェクトになりました。作曲家の自筆譜から楽譜を作るためにチェックを繰り返し、400箇所以上の直しを行うなど、校訂に携わりました。録音は高い評価をいただき、私はこれまで10以上の楽団でこの曲を演奏しています。

__ロットの交響曲の特徴はどんなところでしょうか?
 まずは、ブルックナーの特徴が表れています。ブルックナーのオルガンの弟子だったロットは、オルガン的な色彩感のある豊潤な響きのオーケストレーションを施しました。第2楽章など、まさにそうした特徴が顕著です。そのため、ブルックナーから非常に高く評価されていました。
 しかし、この曲は約100年もの間、消えてしまっていました。それは、マーラーがロットの楽譜を長く所有していたからではないかと言われています。ロットのこの交響曲ができたとき、マーラーはまだ1曲も交響曲を書いていませんでした。マーラーはロットのこの楽譜から多大な影響を受けて、交響曲を作曲したのではないかと思います。マーラーの交響曲は、後に有名になりましたが、そのインスピレーションの源泉であったロットの交響曲は、まだ広く知られていません。ロットが20歳でこのような曲を書くには、本当に信じがたい才能とエネルギーが必要だったと思います。彼はこの曲に、自分を育ててくれた作曲家、ベートーヴェンやワーグナー、ブルックナー、ブラームスらへの尊敬の念を込めているように思います。残念ながら、ブラームスや評論家エドゥアルト・ハンスリックには認められなかったのですが……。

__ロットは、精神障害を起こし、25歳の若さで亡くなってしまいます。
 彼のスコアからは、やはり尋常ではないものを感じます。急なアッチェレランドやリタルダンドが指示されている部分などは独特です。フレーズのつなぎ合わせ方なども、強引に感じるような部分がありますし、彼の思考が走馬灯のようにクルクルと駆け巡っているようにも感じます。また、トライアングルやティンパニの使い方もユニークで特徴的です。トライアングルは、彼が尊敬していたブラームスの交響曲第4番の第3楽章と似ていますが、ロットの方が先に作曲しています。ロットが表したかったのは、天上的な明るさや輝きで、天使が踊っているようなイメージではないでしょうか。トライアングルの音は聞こえているのですが、実在しているのかどうか分からないような。

__昨年の記者会見では、「ロットの音楽を広める使命を感じている」と意欲を語っていましたね?

 はい、使命を感じています。日本では、マーラーとブルックナーは大変人気が高いと聞きました。でも、この二人の偉大な作曲家の間には、ロットという才能あふれる作曲家がいたことを、少しでも多くの人に好奇心を持っていただけたらと思います。彼のユニークな才能、マーラーに与えた影響などを、彼の音楽から感じ取っていただければ嬉しいです。前半に取り上げるプフィッツナーのチェロ協奏曲も、残念ながら有名ではありません(笑)。ロマンティックで歌にあふれていて、すごく美しい作品です。一緒に録音したアルバン・ゲルハルトさんと日本でも共演できることは嬉しい限りです。

第591回定期演奏会

2019年9月10日〈火〉 サントリーホール

指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
チェロ=アルバン・ゲルハルト

プフィッツナー:チェロ協奏曲 イ短調(遺作)
ハンス・ロット:交響曲 ホ長調