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1月15日に久々に登場する下野竜也のインタビューを掲載

下野_5763.JPG「久々の共演が楽しみ。でも、ちょっと緊張もしている」

1月15日(水)、下野竜也が2年10ヶ月ぶりに読響の指揮台に上がります。下野は、2006年に読響の正指揮者に就任し、2013年から2017年3月まで首席客演指揮者として活躍してきました。2017年4月からは、広島交響楽団の音楽総監督として腕を奮っています。1月15日の《第594回定期演奏会》に向けて、プログラムの聴きどころなどを語っていただきました(聞き手:事務局)。

__2020年1月は、首席客演指揮者を退任してから、2年10ヶ月ぶりの登場になります。
 素直に嬉しいです。読響は30代から40代まで携わった、自分にとっての大切なオーケストラですからね。読響と一緒にいたときも思っていましたが、少し離れて感じたのは、やっぱり読響は温かいオーケストラだったということ。そういえば、3月にカンブルランさんの常任指揮者・最終公演でのアンコール動画が友人から送られてきて、それを見たとき、ブワーって涙がでました。「あ、読響はこういうオケだったよな」と思い出しました。僕は、血の通った素晴らしい楽団員たちに育ててもらっていたんだなぁと、改めて感じました。
 実は、退任以来、機会がなくて一度も読響の演奏を聴いてないのです。なので、本当に久々に共演できることが大変楽しみです。“仲間たち”が今どうしているのか、そして今後の読響がどのように発展していくのか、とても興味あります。

__今回は、二つの日本初演の作品を含む、刺激的なプログラムを組まれました。
 正指揮者の2006年以来、読響との10年間では、確かに尖ったプログラムやバラエティに富んだ作品を演奏しようと、ヒンデミットにはじまり、カレル・フサ、ジョン・アダムズ、フィンジらの作品などを演奏してきました。今回も、あまり聴く事のできない作品などを取り上げることが、自分に与えられた使命かと思い、選曲しました。久々にお招きいただいたのに、「またか?」とファンの皆様には思われてしまいそうですが(笑)。ロシアとアメリカをテーマに作品を組みました。グバイドゥーリナとアダムズの性格の異なる動的な二作品が軸になり、それに対応させるようにショスタコーヴィチとモートン・フェルドマンの静的な二つの曲を選びました。音楽的なバランスや組み合わせも良いかなと思って。

 フェルドマン作品は、1969年に作曲されたものです。私が以前に録音で聴いたことがあり、いつか演奏してみたいと思っていました。このように日本のオーケストラの定期演奏会で、フェルドマンの作品を演奏する機会は、珍しいのではないでしょうか。8分ほどの曲ですが、静かに色合いが少しずつ変化していきます。最後は、チャイムとチェレスタの金属音で意味深に終わっていきます。

 また、アダムズのサクソフォン協奏曲で、サクソフォン奏者の上野耕平さんと初めて共演できることは、とても楽しみです。名前も「上野と下野」でちょっとミョーな親近感があったりして(笑)。アダムズ作品は、読響と2015年に「ハルモニーレーレ」を演奏したので、その流れもあり、うまく行くのではないかと期待しています。

__最後は、グバイドゥーリナの「ペスト流行時の酒宴」を日本初演します。
 私自身、グバイドゥーリナの作品を演奏するは初めてです。アルブレヒトさん、スクロヴァチェフスキさん、カンブルランさんらも、常に新しい作曲家や作品との出会いを求めていました。私も、常に新しい出会いを求めていて、この作品の楽譜を見ても非常にユニークで、ぜひ取り上げたいと思いました。縦横無尽にオーケストラの各楽器が駆使されていて、読響の機能性と幅広いダイナミクスが活かせる作品だと感じました。プーシキンの戯曲のように、死に追い詰められるような緊迫感に満ちていて、25分ほどの作品ですが、息つく暇もないように思います。「声のないオペラ」のようなドラマトゥルギーも感じられ、惹きつけられます。ラトルさんやヤンソンスさんも指揮していて、世界的にも評価されている作品ですので、日本でも演奏したいと思いました。
 お客様には、知らない曲を聴くことをためらう方がいらっしゃるのも理解しています。でも、シェフの本日のオススメ料理のような感じで、楽しんでいただけたら嬉しいです。

__この曲の途中に、録音テープによるテクノ音楽のリズムのような音が加わります。
 ヨーロッパの歴史において、「ペスト」は避けて通れないもの。その恐怖や脅威を想像し、この作品に臨みます。あのテープの音は、“狂騒”ですね。極限状態を表す方法として使用しているのかと。オーケストラ以外の、いわば「異物」を用いることで、自分の想像しえなかった極限状態や心理状態、異質なものが入ってくる違和感のようなものが表されていると思います。そこにも、ライヴならではの面白さがあると思います。

__最後に、読響ファンの皆様にメッセージをお願いします。
 相変わらずのプログラムで、ごめんなさい(笑)。久しぶりに皆様にお会いできることが、とても嬉しいです。でも、ちょっと緊張もしています。自分も広島交響楽団でたくさんのことを経験していますし、読響も常任指揮者が変わり、新しい楽団員も入ったりして、変化もしているでしょう。お互いへの期待もあります。懐かしさもありますが、「はじめまして」という新鮮な気持ちで向き合えればと思います。自分がポストを退任後に、前のオーケストラを振ることは、初めての経験です。色々な面で刺激的な1週間になる気がします。ぜひ、知らない曲ばかりと敬遠せずに、会場にお越しいただければと思います。

第594回定期演奏会

2020年1月15日〈水〉 サントリーホール

指揮=下野竜也
サクソフォン=上野耕平

ショスタコーヴィチ:エレジー
ジョン・アダムズ:サクソフォン協奏曲
フェルドマン:On Time and the Instrumental Factor
グバイドゥーリナ:ペスト流行時の酒宴