9月12日(土)と13日(日)《第230回土曜・日曜マチネーシリーズ》では、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲で郷古廉(ごうこ すなお)が共演します。数々のコンクールで入賞後、ウィーンでも研鑽を積み、飾り気のない演奏で秘めた情熱を音で表すことで注目を浴びている“孤高のヴァイオリニスト”です。読響とは、2010年8月の《三大協奏曲》で初共演し、2015年7月の《定期演奏会》ではフランソワ=グザヴィエ・ロトの指揮でベルクのヴァイオリン協奏曲を演奏し、好評を博しました。約5年振りの登場となる今回の演奏会に向け、抱負などを語っていただきました。
__読響とは、2010年の《三大協奏曲》から何度か共演しています。読響にはどんな印象をお持ちでしょうか?
初共演から10年が経つのですね。これまでの共演を通して、オーケストラとしての壮大な音を持ちつつ、指揮者やソリストにも機敏に反応し、協奏曲においてもどこか室内楽的な愉しさと一体感が感じられることが非常に印象的です。
__郷古さんが、ヴァイオリニストとして大切にしていることや目標などを教えていただけますか?
ヴァイオリニストとして大切にしていることは、自分の楽器と自分の身体のメンテナンスです。ヴァイオリンは僕の表現の手段に他なりませんが、音楽というのはもっと広い世界にあるものだと思っています。そして音楽は人生そのものであると信じていますから、人としていかに生きるかが最も大切だと思います。今の目標は、今度の12日と13日の演奏会で良い音楽をすること!
__3月以降、新型コロナウイルスの影響で多くの公演が中止や延期になったと思います。どのような思いで過ごされていましたか?
世界中で本当に沢山の方々が亡くなられ、今もなお苦しみの中にある方々がいるということに、胸が痛みます。コロナによってご家族や大切な方を亡くされた方々の思いも、計り知れません。自分が音楽家として何をしてきたのか、何をしなければならないのか、最も深く考えた時間でしたし、それは今も続いています。今またこうして演奏会が出来ることを喜ぶだけではなく、これから来るべき大きな変化について皆がよく考え、行動する時だと思っています。
__今回の演奏会への思いや抱負、曲目の聴きどころなどを教えていただけますか?
ベートーヴェンの協奏曲は、ヴァイオリニストにとって最も重要な作品のひとつです。ベートーヴェンの音楽には、いつも強い意志が宿っていると思っています。生きることへの意志です。ソロの冒頭、五度の和音から始まり、束の間孤独に彷徨い、最も高いDの音へ到達するまで、これだけで何ともベートーヴェンらしい強靭で誇り高い精神が感じられます。今年がベートーヴェン・イヤーというのも偶然ではないような気がするくらい、彼の持つ意志が今我々に投げかけるものは大きいと思います。
そして鈴木優人さんとの初共演、本当に楽しみです! このような状況の中、聴きに来てくださる方々に、心からの感謝を込めて演奏したいと思います。
第230回土曜マチネーシリーズ
2020年9月12日〈土〉 東京芸術劇場
指揮=鈴木優人
ヴァイオリン=郷古廉
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
第230回日曜マチネーシリーズ
2020年9月13日〈日〉 東京芸術劇場
指揮=鈴木優人
ヴァイオリン=郷古廉
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」