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image_50458113 - コピー.JPG4月5日(金)《第637回定期演奏会》には、桂冠指揮者シルヴァン・カンブルランが登場し、3つの20世紀音楽を指揮します。1曲目はマルティヌーが、ナチスによって全滅させられたチェコの村リディツェへ書いた追悼の音楽で、苦しさと祈りが入り混じり、魂が天に昇るように響きます。続いて、ドイツを拠点に活躍する本格派・金川真弓が独奏を務め、バルトークの最高傑作の一つとされるヴァイオリン協奏曲第2番を演奏。ハンガリー民謡的な5音音階や独特のリズムに加え、新たな語法や響きへの追求が込められており、金川とカンブルランが鮮烈なサウンドを作り上げるでしょう。後半のメシアン「キリストの昇天」では、メシアン演奏の世界的スペシャリストとされるカンブルランが、カラフルかつ繊細な音響空間を築き、聴き手をえも言われぬ神秘的な世界へと誘います。

リハーサル中のマエストロに、今回のプログラムの聴きどころなどを伺いました。

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___今回のプログラムは、どのようなお考えで組んだのですか?

ヴァイオリンの金川さんからバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番の提案があり、それを中心にプログラムを考えました。バルトークはハンガリーの作曲家なので、何か東欧の音楽と組み合わせたら良いと考えながらも、一方で2020年6月にコロナ禍で演奏できなかったメシアン「キリストの昇天」を演奏したいと思っていたので、マルティヌーの「リディツェへの追悼」と「キリストの昇天」でバルトークを挟むアイデアを思いつきました。結果的に1930~40年代の約10年の間に書かれた3つの20世紀音楽が並びました。

___前半の東欧の2曲について、聴きどころなどをお教えください。

マルティヌー「リディツェへの追悼」は、ナチスによって僅か一日で消滅してしまった小さな村について書かれた曲です。とても悲しい出来事ですが、音楽は暴力的ではなく静かなものです。最後にハ長調の和音が、光が差すように響きます。これはメシアン作品と共通するものです。また両作品では、管楽器のコラールが特徴的という点でも繋がっていると感じられます。

バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番は、独奏もオーケストラもとても難しく、演奏機会が多くないと思います。バルトーク独特のハンガリーの民謡を用いたリズムや音階が特徴的です。今回は、初共演となる日本の若いヴァイオリン奏者の金川さんと演奏できることをとても楽しみにしています。

___後半のメシアン「キリストの昇天」は、どんな音楽でしょうか?

「キリストの昇天」は、1小節目からメシアンと分かる、とても瞑想的で神秘的な音楽です。メシアンというと鳥の鳴き声を用いた音楽で有名ですが、この作品は“鳥の前の時代”の作品。金管楽器だけの部分や弦楽器のみの部分などもあり、独創的な編成、管弦楽法で書かれています。また、メシアンがティンパニを用いた最後の管弦楽曲でもあります。第2楽章は、ドビュッシーの「聖セバスティアンの殉教」からの影響が感じられます。幅の広い音階を用いたモティーフや弦楽器のフラジオレットを用い、またヴィオラ・パートを4つに分けるなど、新しい響きを追求しているのが感じられます。一方、第3楽章は舞曲を思わせるスケルツォ的な楽章で、そのリズムはハンガリーの舞曲のようなものです。この点からもバルトークとメシアン作品の繋がりも感じられるかもしれません。

___最後にお客様へのメッセージをいただけますか?

20世紀に書かれた3つの曲を演奏しますが、初めて聴く方にもぜひ怖がらずに聴いてほしいです。どの作品も、とても美しいメロディが出てきます。マルティヌー作品はとても感動的な曲ですし、バルトーク作品は華やかでヴィルトゥオーゾ的な部分にも注目してほしいです。また現在、世界ではウクライナやパレスチナなど様々な紛争が続いていますが、マルティヌーやメシアンの作品からは瞑想的な部分や希望を感じられる部分も多いはずです。会場では、皆様に何かを感じていただけると嬉しく思います。

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チケットは、読響チケットセンター 0570-00-4390(10時~18時)と読響チケットWEB で好評発売中です。
当日券は、18時から販売します。学生券(2,000円/25歳以下/要学生証)の整理券も18時から配布します。皆様のご来場をお待ちしております。

第637回定期演奏会

2024年4月 5日〈金〉 サントリーホール

指揮=シルヴァン・カンブルラン
ヴァイオリン=金川真弓

マルティヌー:リディツェへの追悼 H. 296
バルトーク : ヴァイオリン協奏曲第2番 BB 117
メシアン:キリストの昇天