明日7月8日(火)19時からサントリーホールで開催する「第650回定期演奏会」では、桂冠指揮者シルヴァン・カンブルランがツェンダーの「シューマン・ファンタジー」(日本初演)などを指揮します。前半には、ベルリンを拠点に活躍する気鋭ピアニストの北村朋幹が、細川俊夫「月夜の蓮 ―モーツァルトへのオマージュ―」で共演します。
リハーサル中のカンブルランに、今回のプログラムの聴きどころなどを伺いました。
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___今回のプログラムの3曲の選曲について教えてください。
まずメインの曲を考えたとき、ツェンダーの「シューマン・ファンタジー」が頭に浮かびました。私は過去にこの曲を4つの楽団で指揮して手応えを感じたので、日本でも演奏しようと思いました。シューマンのピアノ曲を基にした作品ですが、現代の作曲家による過去の“クラシック音楽”ともいえます。1曲目に選んだのはメンデルスゾーンの序曲ですが、メンデルスゾーンとシューマンの二人の、友人であり音楽家同士としての深い関係性は広く知られているところですし、2曲目の細川さんは、生前のツェンダーの親しい友人の一人でした。今回のプログラムには、作曲家同士のつながりとお互いへの尊敬、愛情を感じ取ることができるでしょう。
___ツェンダー作品の聴きどころは?
原曲のシューマンのピアノ曲を知っている方もいらっしゃると思います。ツェンダーはシューマンのこの曲に対峙し、インスピレーションを得て知的に解釈し、大編成の管弦楽作品にしました。ツェンダー自身による「間奏曲」なども加えており、シューマンの音楽ではないのにどこかシューマンを感じさせる・・・そんな“シューマンの幻影”のような音楽です。全く新しい部分もあり、「なんだこれは!?」と驚くかもしれません(笑)。特筆すべきなのは、ツェンダーの素晴らしいオーケストレーションです。独特な色彩感を持っており、どの部分も本当にその楽器でないといけないようにできています。打楽器も多く出てきます。シューマンの音楽に新しい息を吹き込み、現代のコスチュームを着させたような作品です。
また、舞台ではないところ(客席や舞台裏)での演奏(バンダ)も特徴的です。バンダは19世紀後半のオペラでよく使われた手法で、もしシューマンが後の時代に生きていたら、この手法を気に入り、きっと取り入れていたことでしょう。ツェンダーは、バンダを用いることでシューマンの音楽と自分が加えた音楽を差別化しているように思います。舞台上ではシューマンの音楽、そしてバンダではシューマンを遠くから眺め、どこかで神秘的に表しています。
___細川作品の特徴はどんな部分ですか?
細川さんの作品は、欧州で数多く演奏しています。読響とは2012年に「ヒロシマ・声なき声」を演奏しました。その時もツェンダーの新作と組み合わせて演奏しました。「月夜の蓮」はピアノと管弦楽のための作品ですが、いわゆる「ピアノ協奏曲」の形式ではなく、ひとつの大きな流れを持つ作品です。モーツァルトの生誕250周年を記念して書かれ、最後の方には、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番の第2楽章の一部が現れます。細川さんの作品は繊細で詩的でとても聴きやすく、独特の官能性も持ち合わせています。個人的にもとても好きな曲です。
___最後にお客様にメッセージを
皆さんには演奏会にお越しいただき、私と私の大切な友人である読響に会いに来ていただけると嬉しく思います。そしてモーツァルト、メンデルスゾーン、シューマン、ツェンダー、細川という5人の作曲家に会ってほしいです。この演奏会は、人と人との結びつきが大きなテーマになっています。会場でお待ちしています。
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当日券は、18時から販売します。学生券(2,000円/25歳以下/要学生証)の整理券も開演1時間前から配布します。皆様のご来場をお待ちしております。
第650回定期演奏会
2025年7月 8日〈火〉 サントリーホール
指揮=シルヴァン・カンブルラン
ピアノ=北村朋幹
メンデルスゾーン:付随音楽「真夏の夜の夢」序曲
細川俊夫:月夜の蓮 ―モーツァルトへのオマージュ―
ツェンダー:シューマン・ファンタジー(日本初演)