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SophiaHegewald_OksanaLyniv2024052275000-Bearbeitet.jpg4月21日(月)《第647回定期演奏会》では、欧州で注目を浴びるオクサーナ・リーニフがバルトークの組曲「中国の不思議な役人」など3曲を指揮します。東京・春・音楽祭「蝶々夫人」、16日の《名曲シリーズ》に続いて読響を指揮するリーニフに、21日公演のプログラムの聴きどころなどを伺いました。

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__4月10日と13日の東京・春・音楽祭《蝶々夫人》と16日の《名曲シリーズ》での共演を経て、読響に対する印象をお聞かせいただけますか?

読響はシンフォニーオーケストラでありながらオペラ作品で初共演することとなりましたが、「蝶々夫人」ではプッチーニの音楽が持つドラマ性や情緒の深み、オーケストレーションの色彩を鮮やかに表現しつつ、歌手陣をサポートする演奏ができたと手ごたえを感じています。「蝶々夫人」を指揮するにあたり、多くの資料を参照したりオペラに用いられた日本の音楽を聴いたりし、さらに物語の舞台となった長崎を訪れてその土地の雰囲気も体験しました。歴史的な背景をもつこの作品を今回日本のオーケストラと演奏できたことを大変意義深く思っています。

その後、16日の《名曲シリーズ》公演ではプッチーニとはまったく異なるベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を演奏しましたが、オーケストラの皆さんはその様式の変化にもとても自然に適応していて非常に感心しました。並外れた正確さと集中力を要するベートーヴェンの作品でも、読響の皆さんの多才さやレベルの高さを目の当たりにし、幅広いレパートリーを誇るオーケストラだと感銘を受けています。

__21日のプログラムの聴きどころや特徴は?

21日の《定期演奏会》では、現代に深く関わる3人の大作曲家の作品をお届けします。2025年は、ショスタコーヴィチとバルトークという、音楽的な業績だけでなくそのヒューマニズムや道徳的な勇敢さにおいても20世紀を代表する偉大な2人の作曲家のアニバーサリーイヤーです。政治的抑圧や悲劇によって生み出された彼らの音楽は、今日でも非常に象徴的なものです。

感情豊かで表現力にあふれるとともに精密な音楽を作曲したバルトークは、私にとって特別な作曲家です。バルトークは悲痛なことにハンガリーからアメリカへ亡命することとなり、祖国との別離の苦しみは彼に深い影響を与えましたが、その音楽は力強く鮮明なままでした。「中国の不思議な役人」はオーケストラのためのヴィルトゥオーゾ的な作品で、R. シュトラウスの「サロメ」や「エレクトラ」、ストラヴィンスキーの「春の祭典」などにも見られる当時の精神を反映したグロテスクでどこか超現実的な物語に基づいています。当時のヨーロッパでは、エキゾチシズム、魅惑、そして未知なるものへの潜在的な恐怖が渦巻いていました。さまざまな大陸の文化的多様性に魅了された雰囲気はこの作品にも色濃く表れていますが、実は演奏が禁止されていた時期があったとも言われています。

ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番はスターリンによる弾圧の絶頂期に書かれ、この作品もまた、政治的な理由で作曲から初演までに7年もの時間がかかりました。共演するヤメン・サーディさんは、現在28歳という若さですでに輝かしいキャリアを築いている素晴らしいヴァイオリニストです。私が今年1月にザルツブルクの「モーツァルト週間」でウィーン・フィルを初めて指揮した際にコンサートマスターを務めていたのが彼でした。今回、ここ東京で再びご一緒できることに感激しています。

__ボーダナ・フロリャク「光あれ」はどのような作品でしょうか?

フロリャクさんはウクライナのリヴィウ出身の作曲家で、実は私が音楽アカデミーで師事していた教授の一人でもあります。彼女は現在、息子たちが最前線で兵役に就いていることもあり戦争の影響を強く受けた生活を送っていますが、フロリャクさん自身は輝きと希望に満ちた人間であり続け、「暗い時代であればあるほど、音楽には光が必要なのだ」と言葉にしています。そのような彼女が作曲した「光あれ」はBBCプロムスによって委嘱され、最近は世界各地で演奏されている作品です。先日長崎を訪れた際に目にした平和公園のモニュメントも、私がこの曲について新たな視点で考えるきっかけとなりました。今回、日本で「光あれ」を演奏する機会を作ってくれた読響に感謝しています。


__最後にお客様にメッセージを。

素晴らしいオーケストラとこのプログラムを演奏できることがとても楽しみです。特にバルトーク作品については、ぜひコンサートにいらっしゃる前にこの曲の解説を読んでいただきたいです。(解説はこちら→ https://yomikyo.or.jp/pdf/book/orchestra202504_01.pdf)バルトークが大胆かつ実験的な作曲家であり、20世紀で最も重要な音楽家のひとりであったことがお分かりいただけると思います。フロリャクの「光あれ」も、ショスタコーヴィチやバルトークと歴史的に通じる部分があり、きっとその類似性を感じていただけるはずです。皆様のご来場を心からお待ちしています!

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チケットは、読響チケットセンター 0570-00-4390(10時~18時)及び 読響チケットWEBで発売中です。

当日券は、18時から販売します。また、学生券(2,000円/25歳以下/要学生証)の整理券も18時から配布します。皆様のご来場をお待ちしております。

第647回定期演奏会

2025年4月21日〈月〉 サントリーホール

指揮=オクサーナ・リーニフ
ヴァイオリン=ヤメン・サーディ

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 作品77
ボーダナ・フロリャク:光あれ
バルトーク:組曲「中国の不思議な役人」