第155回東京芸術劇場 名曲シリーズ

2008年11月27日(木) 19:00開演

会場:東京芸術劇場

指揮:オスモ・ヴァンスカ
トロンボーン:クリスチャン・リンドバーグ

《ヴァンスカ・ベートーヴェン交響曲シリーズ IV》
◆アホ/交響曲第9番 ~トロンボーンと管弦楽のための
◆ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」

オスモ・ヴァンスカ (Osmo Vänskä)

 シューマンはベートーヴェンの交響曲第4番のことを「2人の北欧神話の巨人の間に挟まれたギリシャの乙女」と評した。
実はこの言葉通り、ギリシャの乙女風の第4番の演奏は20世紀の後半まで連綿と行われてきた。しかし1980年代、大指揮者カルロス・クライバーがその乙女像を一変させる。神聖な美の極致のように思われた音楽を、激情の渦に変えたのだ。
ヴァンスカによるベートーヴェンの交響曲演奏は、そうしたクライバー時代をさらに超えたものである。偶数番号の交響曲第4番に潜む “激情” をも包含した豊かさを志向する解釈に、今という時代の成熟があると表明しているようだ。
ヴァンスカのピアニッシモを聴いてほしい。音の綾、響きの作りを、あたかも顕微鏡を通して見せるかのように、細密に、うごめく内声の響きまでをも描き尽くし、透明かつ微細に表現する。逆にフォルテは響きそのものに激性を持たせ、時には逆巻く怒ど涛とうさながらに描き切るのだ。その響きの落差、デュナーミクの幅の驚異的な広さこそが、ヴァンスカのベートーヴェンをスリリングなものにし、振幅の広い今・21世紀を、音楽に語らせているのである。
1953年フィンランド生まれ。ヘルシンキ・フィルのクラリネット奏者として音楽活動を始め、後にシベリウス・アカデミーで名教授パヌラに師事した。
ブザンソン国際指揮者コンクールに優勝後、本格的な指揮活動を開始し、85年、当時、国際的には無名だったラハティ響の首席客演指揮者となり数々の名演奏を生み、88年、同響の音楽監督に就任。飛躍的に同楽団の技量を向上させ、世界的に注目されるようになる。  ラハティ響とはシベリウス作品を数多く録音し、現在に至るまでのベストCDも多い。2008年まで首席指揮者を務めるが、その後も継続的に指揮台に立つという。
93-96年アイスランド響、96-2002年BBCスコティッシュ響の首席指揮者を務め、2003年からミネソタ管の音楽監督に就任、ベートーヴェン交響曲全曲録音を進行中である。(Y.K.)
 

クリスチャン・リンドバーグ [トロンボーン] (Christian Lindberg)

 トロンボーンの名手といえば、皆さんは誰を思い出すだろうか?
 「まずグレン・ミラーかなぁ」
 「春風亭柳昇は痛快だったね」
 「作曲家のグロボカールでしょうか?」
 「いや、谷啓のほうが身近だよ」
 などと、時代への郷愁と共になつかしくその面影を思い浮かべるだろう。
 スライドを縮めたり伸ばしたり、見ているだけでも運動量の多そうなこの楽器の名手たち。さあ今の時代となると...と考えると、実はこのリンドバーグが世界最高という呼び声がもっぱらだ。
 “天才リンドバーグ” 
 “トロンボーンのパガニーニ”
 “スーパーエンターテイナー”
 彼を形容するキャッチフレーズは数々あり、その変幻自在なテクニックに表現意欲を刺激された、多くの作曲家が彼のために作品を書いている。今回取り上げる現代音楽の人気作曲家カレヴィ・アホの交響曲第9番は、まさにそうしたリンドバーグのための代表曲のひとつ。現代のトロンボーン芸術の頂点をその目と耳で確かめてみよう。
 1958年スウェーデン生まれ。17歳でトロンボーンを始め、2年後にストックホルム王立音大に入学、同時にストックホルム王立歌劇場管に入団した。しかし、ソロ奏者になるべく、まもなく英国王立音大に留学している。
 25歳でストックホルム・フィルと共演してデビュー。フランク・マルタン・コンペティションで優勝し、マリア・マルタン賞も併せて受賞した。
 92年、ヨーロッパ合同4社の放送局で制作したコンサートに同行してのドキュメンタリー番組がヨーロッパ各国で放送されて話題を呼び、94年にはイギリスBBCの「ザ・クラシカル・ミュージカル賞」を指揮者のアバドやチェロ奏者ヨーヨー・マとともに受賞した。これまで日本にもたびたび訪れ、主要なオーケストラと共演している。
 ベルリン・フィル、シカゴ響、BBC響など、世界有数のオーケストラと舞台に立ち、華やかな名演奏を聴かせている。
 なおリンドバーグには、生地スウェーデン語での呼び名リンドベルイという表記もある。(Y.K.)

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