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第478回定期演奏会

2009年1月23日(金) 19:00開演

会場:サントリーホール

指揮:上岡 敏之
ピアノ:フランク・ブラレイ

◆マーラー/交響曲第10番から アダージョ 嬰ヘ長調
◆モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番
◆ヨゼフ・シュトラウス/ワルツ 「隠された引力(デュナミーデン)」
◆R・シュトラウス/歌劇「ばらの騎士」組曲

上岡 敏之 (Toshiyuki Kamioka)

「世界最長の演奏時間ではないか」と話題をさらった、ブルックナーの交響曲第7番を収録したCDを、手兵ヴッパータール響を指揮して最近リリースした。また自らが独奏者としてラフマニノフのピアノ協奏曲第3番で読響と共演したこともあった。
 読響を指揮してびっくりさせられたのは、フレーズごとにニュアンスを変え"欣喜雀躍(きんきじゃくやく)"といった感じを引き出したシューマンの交響曲第4番だ。その公演はテレビ放映もされ評判となり、聴衆の要望から幾度も再放送された。
 上岡は多くの聴衆が抱く既成の、作曲家像への思い込みを覆し、まるで変化球を使いこなすピッチャーのように名曲に新たな生命力を吹きこんでみせる。その変化球も3、4球続くと、まぐれや思いつきではなく、譜面も深く研究し、読み込んだ成果による解釈に基づく再創造であることがわかる。
 指揮者として欧州、特にドイツの伝統的なキャリアである歌劇場の稽古ピアニスト(コレペティートル)からのたたき上げによる、経験と実績が目覚ましい活躍を見せるスプリングボードとなっている。
 東京生まれ。東京芸大で指揮、作曲、ピアノ、ヴァイオリンを学んだ。ロータリー国際奨学生としてハンブルク音大に留学し、ザイベルに指揮を師事した。
 キール市立劇場のソロ・コレペティートルおよびカペルマイスターとして、オペラ指揮者への道をスタートする。
 92-96年エッセンの市立アールト劇場の第1カペルマイスターを務め、98年からヘアフォートの北西ドイツ・フィルの首席指揮者を務めている。
 また2004年からはザールブリュッケン音大の指揮科の正教授に就任、ヴィースバーデンのヘッセン州立歌劇場の音楽総監督を8年務めた後、ヴッパータール市の音楽総監督に就任した。
 また客演ではバンベルク響、ケルン放送響(WDR)、バイエルン放送響、シュトゥットガルト放送響などドイツ有数のオーケストラを振っている。
 読響との客演も多く、昨秋11月には、日生劇場での二期会との公演〈魔笛〉全曲を指揮している。(Y.K.)

フランク・ブラレイ[ピアノ] (Frank Braley)

 社長の代役として30分間社員を前にスピーチしてくれといわれたら、あなたは話せるだろうか。
 「釣バカ日誌」の主人公の鈴木建設の浜ちゃんだったら出来るかもしれないが、さあ・・・どうだろう?
 フランク・ブラレイの名に接したのは、そんな状況のときだった。2003年、いま世界で1番人気のピアニスト、マルタ・アルゲリッチの代演を、こともあろうに彼女の名を冠した音楽祭「アルゲリッチ音楽祭」で引き受けることとなったのだ。
 聴衆はすべてが、スーパースター・アルゲリッチの才気あふれる劇的な演奏を求めてやまない熱狂的なファンだ。
 2人といない国際的看板スターが欠席したコンサートでいかにその代役となる人が弾きにくいか。
 ところがその急遽代演をつとめなければならなかった大舞台で、ブラレイは聴衆からブラボーを誘う大熱演を披露したのだ。
 この拍手喝采が、たちまち彼を日本クラシック界の時の人とした。
 困難は克服することで名声を得る活力ともなる。翌04年5月には、矢崎彦太郎指揮東京シティ・フィルに登場。翌月にはル・サージュとのデュオでドネーヴ指揮新日本フィルとプーランクの2台のピアノとオーケストラのための協奏曲を演奏している。
 さらに05年からは毎年、東京で開催される「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」に参加し日本の聴衆にはおなじみのピアニストとなった。
 1968年生まれ。4歳でピアノをはじめ10歳でフランス放送フィルのコンサートでデビュー。その後パリ国立高等音楽院でドヴァイヨン、イヴァルディ、ルヴィエらに師事した。
 1991年、エリーザベト王妃国際音楽コンクール優勝、インターナショナル・ミュージック・アワードを審査員全員一致で受賞した。
 同年パリデビューし、ヨーロッパ各地での演奏活動を始める。パリ管、フランス放送管、ボストン響などと共演、デュトワ、ジョルダン、インバル、マズア、プラッソン、佐渡裕ら有力指揮者と共演している。 (Y.K.)

マーラー交響曲第10番から アダージョ 嬰ヘ長調

作曲:1910年夏、トプラッハで着手(未完)
初演:1924年10月12日、ウィーン(第1・第3楽章、クシェネック校訂版)

 交響曲第9番の完成後すぐに着手された第10番は、マーラー(1860-1911)の死によって未完に終わりました。5楽章として構想された全曲の骨格は4段譜表の略式総譜という形で遺されています。しかし次の過程となる総譜の草稿が完成されたのは第1・第2楽章だけで、これも最終的には浄書には至りませんでした。そのため後に多くの作曲家や学者による補筆完成版が出されましたが、本日は作曲者の手で一応完成したといってよい第1楽章〈アダージョ〉が、国際グスタフ・マーラー協会版(1964年、第1楽章のみ収録)によって演奏されます。
 〈大地の歌〉や交響曲第9番とともに、この第10番もマーラーの「死」への観念が反映された作品といえましょう。第1楽章と終楽章が長大な緩徐楽章となっていることも、第9番と共通する構想です。マーラーにとって交響曲創作の道は決して第9番で完結したのではなく、当然ながらその先に進む作品として第10番があることを忘れてはなりません。 さて、この〈アダージョ〉は、速度表示というよりは楽章の性格を示すタイトルといえるでしょう。ヴィオラの独白で始まり、抒情と官能、怯えや憂いなどが無尽蔵にあふれ出す音楽――第9番以上に伝統的な調体系を越えたハーモニーが広がります。後半は突然のコラール風楽節と、その流れを断ち切る強い不協和音をへて、夕暮れのような平穏へ。

モーツァルト ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488

作曲:1786年3月2日完成、ウィーン
初演:不明

 ウィーンに定住したモーツァルト(1756-91)が、自立した音楽家として力を注いだ活動のひとつに、貴族や裕福な市民を対象に主催した予約演奏会がありました。 この演奏会のために彼は多くのピアノ協奏曲を自作自演し、1784年頃には音楽家として人気の絶頂期を迎えたのです。このイ長調協奏曲は、有名なハ短調のピアノ協奏曲(K.491)とともに1786年春の予約演奏会のために書かれました。 モーツァルトがちょうど完成間近の大作〈フィガロの結婚〉の作曲に忙殺されていた頃でした。
 ここで特筆されるのは、第1楽章の自筆総譜に独奏ピアノのカデンツァが念入りに書き込まれていることです。 その一方で第2、3楽章にはカデンツァを入れる箇所がありません。通常の協奏曲では即興演奏が歓迎されますが、この曲に限ってはそれをさし挟む余地がないほど、完成度が高いといえるでしょう。 この曲は、同時期のピアノ協奏曲の中でもとりわけ簡潔で平明なスタイルをもちますが、そこには無駄をそぎ落とし洗練を極めてこそ可能な、作曲家独特の表現美が認められます。

第1楽章
アレグロ イ長調
第2楽章
アダージョ 嬰ヘ短調
第3楽章
アレグロ・アッサイ イ長調

ヨゼフ・シュトラウス ワルツ〈隠された引力〉(デュナミーデン) 作品173

作曲:1865年初め
初演:1865年、ウィーン

 ヨゼフ・シュトラウス(1827-70)はヨハン・シュトラウスI世の息子で、「ワルツ王」ヨハン・シュトラウスII世の弟にあたります。兄とともに一家のシュトラウス管弦楽団の指揮者としても活躍しました。 兄ヨハンの華やかで快活な音楽とはまた異なり、ヨゼフの作品には、ロマン派の作曲家の影響を受けた詩的な性格や内省的な作風が感じられます。
 ヨゼフは毎年謝肉祭の季節に多くの新作ワルツを発表しましたが、〈隠された引力〉もその時期、実業家の舞踏会のために書かれた曲です。 そして彼自身の詩的感覚で創った「デュナミーデン」という言葉も添えられました。
 曲はロマンティックな繊細さとドラマを感じさせる序奏で始まり、魅惑的なワルツの主題へとひきつがれます。この最初の主題こそ、後にR.シュトラウスが〈ばらの騎士〉でオックス男爵のワルツに引用した旋律なのです。 ウィーン風の優雅な3拍子にのって、次々と新たな旋律が巡りでた後、最初の主題が再び戻って曲を結びます。

R.シュトラウス歌劇〈ばらの騎士〉組曲

作曲:1909-10年(オペラ原曲)。組曲の出版は1945年(ロンドン、Boosey & Hawkes)
初演:1946年9月28日、ウィーン

 リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)が「モーツァルト風のオペラ」を意図して、ホフマンスタールの台本で書き上げたのが歌劇〈ばらの騎士〉です。 全曲を通じてわかりやすい旋律や美しい響きが満載で、たいへん親しみやすいだけでなく、人生の機微や真実の愛についても自然と考えさせられるところが、この歌劇の一番の魅力でしょう。
 この演奏会用組曲(ロジンスキー編曲)は全曲の聞かせどころを切れ目なくつなげたもので、歌劇と同じ序奏で始まり、甘美な調べがさまざまな場面を彷彿とさせます。 舞台は18世紀半ばのウィーン。元帥夫人と戯れの恋に浸る若い貴族オクタヴィアンは、粗野で好色なオックス男爵の婚約者となった純粋な娘ゾフィーに出会い、ひと目で惹かれます(二重唱の旋律、銀のばらの主題)。 荒々しい音楽の後、有名なオックス男爵のワルツで陽気なウィーンの雰囲気へ。そしてオクタヴィアンとゾフィーの恋を心静かに受けとめ、潔く立ち去る元帥夫人。 三人三様の揺れる心情を見事に歌い上げた三重唱の旋律がたっぷりと奏でられ、残された恋人たちの二重唱の後、再びワルツをへて華やかに終わります。

(かわかみ かおる・音楽学)

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